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v0.28.9 — 本稿は建設中です。理論の構成、命題、実証の結論はいずれも変更されうるものです。概要

付録 E
改訂履歴

E.1 版の履歴

本稿は建設中の理論であり、構成と内容は複数回にわたり作り替えられている。 主要な段階を記録する。各版の呼称は便宜的なものである。

版番号は段階に対応する。第 n 段階が v0.n.0 である。 構成の変更、命題の追加や撤回、新たな実証があれば段階を上げ、 誤記や体裁の修正は第三桁で扱う(v0.8.1 など)。

表 E.1: 版の履歴。各段階の版番号、構成の変更、主な内容。
段階 版

構成

主な内容

第1段階 v0.1.0

検討の時系列順

Φ の定義、27類型、方法論の四分類

第2段階 v0.2.0

論理順へ再編

理論・類型・方法・実証・総括の五部構成。証明と数値例を追加

第3段階 v0.3.0

部構成の変更

制約下の演繹を「応用」から「写像の空間と制約」へ移動

第4段階 v0.4.0

実証の追加

法人企業統計による CCC と g⋆ の測定

第5段階 v0.5.0

弱点の類型化

独立性・外生性・水準と変化の三類型を整理

第6段階 v0.6.0

τ の導入

CCC = ∑ ⁡ τi + τinv により水準差を演繹

第7段階 v0.7.0

既存理論の統合

κi の各項に既存理論を対応させ、付録A.4.1を三層化

第8段階 v0.8.0

定義の補充

費用の分割、E、κK、g⋆ への d と I の導入

第9段階 v0.9.0

適用章の追加

情報構造の供給者を差し替えた場合の演繹(第10章)。カタログの件数を28に訂正

第10段階 v0.10.0

命題の補充

第10章に同時性、受益者の同定、前受による成長の三つを追加。定義10.1に不可分性を課した

第11段階 v0.11.0

方法論の補充

実証章が記録していた未反映の改訂要求を第12章に反映。同定の失敗と変数の選択を節として追加

第12段階 v0.12.0

実証設計の前置き

理論を観測に接続する五段階を第11章として第III部の先頭に置いた。照合と検証の区別を規律として明示

第13段階 v0.13.0

操作化の補充

可用性を式として書き、類型への割り当て規則を定めた。未解決の問題を21項目に整理し直した

第14段階 v0.14.0

測定の是正

棚卸資産の範囲が CCC と弾力性に与える影響を10業種について測定(第16.10節)

第15段階 v0.15.0

予測の追加登録

規模と離職率の相関を B1 の代理と読み、予測YとZを登録(第15.3.5.0節)

第16段階 v0.16.0

第II部への検定経路

手続き上の記録について予測Φ1–Φ4 を登録(第18.1節)

第17段階 v0.17.0

予測Yの検定

全国の標本を取得し、東京都を除いた部分で検定。部分的支持(第15.3.5.0節)

第18段階 v0.18.0

記述の削除と体裁

一つの観察に依拠した記述と n = 2 の表を削除。定理型の本文を立体に統一

第19段階 v0.19.0

再現手段の同梱

データと処理をリポジトリに入れ、付録E.33の記述を実態に合わせた

第20段階 v0.20.0

未解決一覧の整理

実施済みの項目を落とし、分類の誤りを直して19項目にした

第21段階 v0.21.0

測定の拡張と取り扱いの明示

棚卸資産の範囲を62業種に広げ、第14段階の判定を弱めた(第16.10節)。個社データの取り扱いを付録E.33に明示した

第22段階 v0.22.0

選定の論拠と参照の整合

族2と族5を選んだ理由を三分解と自由度から導いた(第11.5節)。ϕ𝑐𝑜𝑔 の記述の矛盾を解いた(第14.6.1節)

第23段階 v0.23.0

予測Zの検定

返戻金の書面907件を判読して強度を測り、予測Zを棄却した(第15.3.5.0節)。登録は18予測となり、未解決は18項目になった

第24段階 v0.24.0

予測Φ1–Φ4 の検定

公開型の分散台帳の記録により第II部の演繹を初めて検定した(第18.2節)。支持は Φ2 のみ。登録は22予測となった

第25段階 v0.25.0

副次的に測れた量

λ と手続きの継続期間を測り、命題9.2に上限を与えた(第18.3節)。予測DがΦ1 と同一であることが判明し、判定を棄却に改めた

第26段階 v0.26.0

本としての整理

22章を20章に統合し、本文から予測の記号を一掃した。登録の文言と判定は付録A.4.1に集約し、手続きの実証を第18章として実証部へ移した。検証障害は最初から六分類として提示する

第27段階 v0.27.2

第I部の体系化

Φ を出発点とする導出の鎖を通した。第2章と第4章を統合して 7 章を 6 章にし、Δ と Π を基本集合から定義、X = Φ(δ) とした。Φ の自由度を三群に整理し、リスク操作の三分類と対応づけた

第28段階 v0.28.0

基本不等式による演繹の集約

現金制約を CCC ⋅ r ≤ E − A の形に整理し(命題5.2)、規模の上限、枯渇時刻、尖頭、比較静学、拘束の入れ替わりをその帰結として導いた。κ の反対称性と加法性を加え、集計の CCC が何を測っているかを特定した。個別に導入されていた第8章の資金制約と期限を基本不等式の特例に改めた

E.2 撤回した主張

本稿は検討の過程で複数回にわたり主張を撤回している。 撤回した内容と理由を記録する。本文には訂正後の記述のみを残しているため、 どの主張が一度は成立していたと考えられていたかは、本付録にのみ現れる。

読者が途中まで読んだ段階で誤解しないよう、本文は訂正後の内容で一貫させてある。 以下は本稿がどのように誤ったかの記録であり、本文の理解には必要ない。

E.3 測定に由来する訂正

当初の記述

訂正後

契機

CCC の上昇により g⋆ が四半世紀で三分の一低下した

m が +91% と分母の悪化 +49% を上回り、m∕CCC は 38.5% → 49.2% へ上昇

m の取得(命題14.2)

小規模層の制約は信用(κ)である

実際に拘束しているのは m。小規模層の CCC は大企業より短い

規模階層別の測定(命題14.6)

ϕ𝑐𝑜𝑔 は世界のどこでも測定されていない

測定例が存在する。手法も確立している

先行研究の確認(第14.6.1節)

小規模層の低い m は固定費の分散不足による

役員報酬が主因。戻すと規模の序列が消える

人件費の内訳取得(命題14.8)

R2 では ϕ が目的関数から制約へ降格する

撤回。H と β の変化で説明でき、降格は内容を持たない

先行研究の確認(注8.4)

容量制約の時刻依存を理論に取り込む

撤回。n = 1 の観測から27類型の基底を書き換えることになる

抽象と具体の非対称の確認(注16.10)

予測Bの不良設定は筆者の予測設定の失敗である

リスク・インセンティブ・トレードオフ論争として四半世紀未決着

先行研究の確認(第15.3.5.0節)
表 E.2: 測定に由来する訂正。当初の記述、訂正後の内容、契機。

このうち第一の訂正が最も重い。 CCC の悪化のみを観測して g⋆ の低下を結論しかけたが、 系5.7は比であり、分母の変化のみから結論は導けない。 m を取得していれば避けられた誤りであり、 実際に本稿では「m の変化を測定していないため解釈は保留する」と記して停止していた。 保留したことが結果的に正しかった。

E.4 推論に由来する訂正

当初の記述

訂正後

在職中に信用が「継続的に売却されていた」

職務著作と同様の原始的帰属。個人に発生してから移転するのではない

信用資産が最大となるのは退職直後である

最大となるのは信用ではなく変換原資(人脈・技術知識)。信用はゼロのまま

λ𝑛𝑜𝑣𝑒𝑙 は各成分の和である

加法ではない。ロックファイルにより λ𝑑𝑒𝑝 は λ𝑠𝑒𝑐 に条件付く

族5はデータ条件が良い

集計層では族2より弱い。個社層に降りて初めて成立する

実データへのアクセス困難が検証の主要な障害である

族5の主要障害は(ii)仮説の不良設定。族2は(iv)アクセス制約だが、必要な粒度が公表されない特殊な形

表 E.3: 推論に由来する訂正。当初の記述と訂正後の内容。

E.5 事前登録が働いた記録

以下は、事前に予測を文章として固定していなければ 事後的な解釈に流れていたと考えられる箇所である。

(1)
上限制手数料の消滅。 族5において上限制が99.7%消滅している事実は、 可測性仮説の傍証として解釈することが可能であった。 実際には上限制の価格水準が一桁低いだけで、可測性とは無関係である。
(2)
CCC と売上高の同期負相関。 45業種中31業種で負の相関(p = 0.008)が得られた。 これを「CCC は景気指標として機能する」と読むことができたが、 分母効果と区別できていない。
(3)
大企業の与信ポジション。 DSO −DPO が大企業で大きいことを 「大企業が取引先を支えている」と解釈しえた。 実際には予測Fが符号ごと棄却された結果である。

第12.6節で他者の記述について述べた事後的物語化は、 筆者自身の解釈にも同様に生じる。

E.6 仮定の明示化

本稿の複数の命題は、当初は独立性の仮定を明示せずに述べていた。 検証の過程で、実際には同時に決まる量を独立として扱っていたことが判明し、 各命題に仮定を書き加えた。

命題

追加した仮定

契機
2.9

ρ が n に依存しない

予測Jの検討
2.22

δ¯ が外生に与えられる

予測Kの検証(階段メニュー)
2.24

m と 𝔼[δ] が独立

同上
5.5

m と CCC が独立

m の取得(命題14.2)
表 E.4: 各命題に追加した独立性の仮定と、追加の契機。

あわせて 𝒢 の内生性(注4.3)を追記した。 証明はいずれも変更していない。適用範囲を狭めただけである。

生産関数の定義域として未定義の記号 𝒳 を用いていた箇所を、 定義域を明示しない記述に改めた。 本稿は f の内部構造を扱わないため、投入の空間を導入する必要がない。 𝒟、F、H、ϕ𝑟𝑖𝑠𝑘 を記号一覧に追加した。

E.7 遅れ時間の導入

第3.1.4節の τi は、当初の版には存在しなかった。 第19.4.3節で整理した弱点(C)、 すなわち水準と変化の未分離に取り組む過程で導入した。

導入の判断は、複数箇所で用いられるかを先に確認して行った。 水準差の説明(系5.17)、横断比較の不可能性(系5.18)、 変化の分解(系5.20)の三つで用いる。

当初は成長期の CCC の歪みと β 推定の再解釈も用途として見込んでいたが、 予測OとPの棄却により、年次データでは検出できないことが判明した (第16.9.2節)。この用途は導入の根拠から外した。

あわせて例4.9が定義より前に CCC と W を用いていた点を修正し、 κ のみで記述する形に改めた。

E.8 既存理論との関係の再評価

本稿の草案では、κi の各項について既存理論の有無を確認しないまま、 一部を本稿固有の領域と見込んでいた。文献を確認した結果、いずれにも理論が存在した。

当初の見込み

確認された既存理論

分野
前受を取引信用として扱う視点は未開拓

reverse trade credit [12,  7]

企業金融
労働の後払いに κ の理論はない

bonding argument [1]

労働経済学
公開実績の蓄積は本稿固有

労働市場シグナリング [16]

情報の経済学
族2-4 の ϕ𝑐𝑜𝑔 は未測定

前払い残高の退蔵の実証 [13]

消費者行動
表 E.5: κi の各項について、当初の見込みと確認された既存理論、分野。

この確認により、寄与の所在が変わった。 当初は既存理論のない領域を探していたが、 実際には既存理論を各項の説明として導入し、 和として扱う部分が寄与である(注3.3)。 付録A.4.1を三層構造に改めたのはこのためである。

なお同種の失敗は繰り返されている。 第15.3.5.0節で予測Bを立てた際にも、 リスク・インセンティブ・トレードオフ論争の存在を確認していなかった。

E.9 定義の補充

以下は誤りの訂正ではなく、定義が薄かった箇所の補充である。

対象

補充した内容

契機
技術の側

費用を Cprod+Cadmin に分割(定義2.14)

ϕprod の源泉が未定義であった
ϕprod

限界費用と反実仮想価格で定義(定義6.2)

同上
自己資本 E

払込資本と ϕ の累積として定義(式(3.10))

残余として暗黙であった
κK

残余請求権として定義(定義3.21)

出資を借入と同一に扱っていた
g⋆

減価償却 d と投資 I を含む形へ(系5.7)

I ≈ dr を暗黙に仮定していた
表 E.6: 定義が薄かった箇所への補充内容と契機。

g⋆ の改訂は測定値を変える。 1千万円未満の階層では、m のみによる値 20.9% に対し、 I を含めた9年平均は 3.1% となる。 命題14.6の結論は維持されるが、 原因に投資負担が加わった。

費用の分割については、当初「C は Φ に依存しない」を命題として証明していた。 しかし C(δ) と定義した時点で Φ が現れないのは定義の帰結であり、 証明は循環していた。撤回し、分割の定義として書き直したうえで、 Φ が費用を生む八つの経路を列挙した。

κK の定義により、主観性が三段階に分かれることが判明した (注3.23)。 評価写像 v の主観性は情報の非対称であり、 残余請求権の価値 V j の主観性は確率測度の不一致である。 前者は開示で解消しうるが、後者は解消しない。

E.10 可逆性の検討と訂正

不可逆性の観点から枠組みを見直し、既存理論との照合を行った。 結果として一件の訂正と二件の追加が生じた。

訂正。 注2.11において、 ρ が内生的になる機構を「相関の低い対象が枯渇する」と記述していた。 [30] によれば正しい機構は異なる。 集約の対象が減るのではなく、集約という行為そのものが集約者間の相関を生む。 二主体が二リスクを等分に持てば、各主体は個別には安全になるが両者は完全に相関する。

追加。 Φ の切り替え費用(注2.18)と 集約の社会的最適性(注2.12)を記録した。 前者は不可逆投資の理論、後者はシステミックリスクの研究に対応がある。

なお可逆性を費用の大小で分類する枠組み自体は、 不可逆投資の理論が既に持つものであり、本稿の寄与ではない。 決定が不可逆であるのは物理的に取り消せないためではなく 取り消しの費用が高いためである、という定式化は [8] の系譜に属する。

E.11 労働者視点の検討

労働者を独立の対象として扱うかを検討し、扱わないと結論した。

当初は「労働者は一人事業の特殊例」という整理を試みた。 Φ が所与で顧客が一社に集中する一人事業、という見方である。 しかし Φ と ϕ の双方で制約が異なることが判明し、 この整理は撤回した(注7.3)。 労働基準法が第2.5節の六自由度のうち五つを制約しており、 ϕprod と ϕcog には対応物がない。

この検討の過程で四つの予測を登録した。

予測

内容

結果
Q

資産の少ない労働者ほど支払サイクルが短い

未検証
R

労働者は企業より高い M𝑓𝑙𝑜𝑜𝑟 を保持する

未検証
S

雇用契約の類型の少なさは法の制約による

未検証
T

フリーランス新法が κ の配分を移す

検証不能
U

個人企業の営業利益率は法人の役員報酬を戻した値に近い

支持
表 E.7: 労働者視点の検討で登録した予測と検証結果。

予測Tの検証不能は、個人事業主の κ が公表されないことによる。 この過程で第13.2節の四分類に収まらない障害を発見した。 調査はされるが集計されないという形態である(注15.18)。

E.12 障害の分類の拡張

第13.2節の四分類は、当初の調査経験に基づいて構成した。 その後の調査で、四分類に収まらない障害が二つ現れた。

種別

発見の契機

記録
(v)集計の選択

個人事業主の κ を求めた際、調査票は存在するが集計表にない

第15.7節
(vi)調整の不作動

予測Xの検定で、307社分のデータがあるにもかかわらず説明変数が動かない

注15.6
表 E.8: 四分類に収まらなかった障害の種別、発見の契機、記録箇所。

(vi)は特に、本稿の方法論に対する含意が大きい。 第III部は、検証できない場合の原因を 測定・理論・識別・アクセスの四つに帰していた。 現実の側が理論の想定どおりに振る舞わないという場合を想定していなかった。

なお、可測性仮説について予測Bを立てた段階では b が二値でしか取れないと記述していた。 その後の調査により手数料実績率という連続量が公表されていることが判明し、 検定が可能になった。障害はデータの粒度ではなかった。

E.13 バイアスの類型の拡張

第III部の選択バイアスは、当初は標本の選択に関するもののみで構成していた。 調査の過程で、標本の選択では説明できない歪みが二つ現れた。

種別

発見の契機

記録
単位の取り違え

一覧の行が事業所単位である一方、値が企業単位で複製されていた

注15.11
変数の選択

族5で、理論的関心の高い分野ほど集計値から必要な量を算出できないことが判明した

注15.3
表 E.9: 標本の選択では説明できない二つの歪みと、発見の契機。

いずれも第12章に節として追加した (第12.7節、第12.8節)。 これに伴い同章の冒頭を「六種」から「八種」に改めた。

前者は標本の選択ではなく観測単位に関わり、 後者は標本ではなく変数に関わる。 いずれも第12章が当初扱っていた範囲の外にあった。

前者の根拠は第17段階で差し替えた。 当初は、許可番号を直接指定した取得で 解決に失敗した番号に直前の結果が返るという挙動を根拠としていた。 これは自動的な取得を制限する措置とも解釈でき、 一つの観察から一般的な障害を立てるのは第16.11節と同型の飛躍であった。 根拠を、第15.3.5.0節で名寄せの有無が相関の符号を反転させた事実に改めた。 あわせて当該の挙動の記述と、それに付随する n = 2 の表を削除した。

あわせて、全数のフレームが得られても母集団が小さければ検定力を得られないことを 第12.9節に追記した。 第15.3.5.0節が同節を「述べたとおり」と参照していたが、 参照先に当該の記述が存在していなかった。

E.14 未解決一覧の整理

第13段階で12項目から21項目へ拡張した一覧を、第20段階で19項目に整理し直した。

(1)
実施済みの項目が残っていた。 標本の地理的拡張は、第15.3.5.0節の検定で全国の標本を取得したことにより完了している。 にもかかわらず着手できる項目の第一位に残っていた。
(2)
同じ作業が二つに分かれていた。 予測Zの検定と、その説明変数である返戻金の率と期間の収集を別項目としていた。 検定と、そのために欠けているデータは同じ作業の二面である。統合した。
(3)
分類を誤っていた。 年齢効果の曲率を「障害を持たないもの」に置いていたが、 これを追うには企業年齢を持つ標本が要る。 本稿が用いた法人企業統計は業種・規模・年度の三軸であり設立年を含まない。 (iv)アクセス制約へ移した。

これにより障害を持たない項目は六件から三件になった。 一覧が実際の状態から離れるのは、項目を足すときではなく、 片付いたときに落とし忘れることによる。

E.15 再現手段が同梱されていなかった

付録E.33は、算出に用いた処理を「別添した」と記していた。 しかしリポジトリには一つも入っていなかった。 本文の主張が公開物によって満たされていない状態であった。

第19段階でデータと処理を同梱した。あわせて三点の欠陥を直した。

(1)
付録E.33が名指ししていた parse.py が動かなかった。 入力が旧環境の絶対パスのままであり、実行するとファイルが見つからずに落ちる。 raw/hojin/ を読む形に書き改めた。
(2)
中間データの一部を再生成する手段がなかった。 役員報酬と減価償却の系列を作るスクリプトが存在せず、 クローンした状態からは復元できなかった。 parse.py を六系列すべてに対応させ、 再生成した値がすべて従来と一致することを確認した。
(3)
出力先の衝突を解いた。 予測Eの検定結果が中間データと同じ名前で書き出されていた。

同梱後、derived/ を消した状態から parse.py と分析 14 本がすべて動くことを確認した。

E.16 一つの観察に依拠した記述の削除

第13章に、許可番号を直接指定した取得で 解決に失敗した番号に直前の結果が返るという挙動を記録し、 これを「取得は成功するが対象を取り違える」障害として一般化していた。

自動的な取得を制限する措置とも解釈でき、他の説明を排除できていなかった。 一つの観察から一般的な障害を立てるのは、 注16.10が戒めるのと同型の飛躍である。 第18段階で当該の記述と、それに付随する n = 2 の表を削除した。

第12章の節そのものは残した。 根拠を、第15.3.5.0節で名寄せの有無が相関の符号を反転させた事実に改め、 節の主題も「取り違え」から行が指す対象と値が指す対象の不一致に改めた。 こちらは四職種で 1,402 の企業行(相異なる企業は 1,130)からなる標本において 結論を反転させる大きさで現れており、一つの観察ではない。

E.17 定理型の本文を立体にした

命題と系を plain スタイルで組んでいたため、本文が斜体になっていた。 和文には斜体がないので立体のまま残り、 英数字だけが斜体になって混在していた。 命題の中に置いた表の数値まで斜体になる箇所があった。

定義・注・例と同じ立体に統一した。見出しは太字と番号のままである。 本文中の \emph による強調のうち、 英数字を含み斜体になっていた箇所も太字に改めた。

あわせて証明の見出しを改めた。 amsthm の既定は英語の Proof であり、和文の文書に合わない。 \proofname を「証明」とした。

これにより斜体で残るのは、証明見出しに付く句点と参考文献の誌名のみになった。

E.18 予測Yの検定と、登録の不備

第17段階で人材サービス総合サイトの全国の標本を取得し、 東京都を除いた部分で予測Yを検定した(第15.3.5.0節)。 判定は部分的支持である。

登録に不備があった。 表15.19は 金額表示の事業所を予測Yでは用いると定めたが、 比較の対象である表15.18の基準値は 金額表示を除いた標本について算出されていた(注15.12)。 登録の時点で基準値の構成を確認していなかった。 両方の規則で報告し、判定が規則によらないことを示す形で処理した。

取得の過程で三点が判明した。

第一に、検索結果の行は事業所単位だが、値は企業単位である (注15.11)。 名寄せせずに相関を取ると、医師では株式会社パソナ一社が134倍の重みを持ち、 相関の符号が正から負に変わる。 名寄せは前処理ではなく結論を決める手続きであった。

第二に、表示される離職率は同じ行の就職者数と離職者数から計算できない。 医師では一致するのが479行中115行にとどまる。 第15.3.5.0節と同じ構成であるため比較には支障しないが、 規模と離職率が同一期間の量でないことを記録した(注15.13)。

第三に、当初の集計は標本の一部を落としていた。 許可番号の記号をユとフに限って抽出したため、 ム(無料職業紹介所)200件と特7件が漏れていた。 これを複写による脱落と誤って記述し、 最大11.2%が失われたと報告していた。 データ行の本数は検索結果と一致しており、脱落はない。

この誤りは判定を変えた。落とした標本では東京都を除いた順位が 基準値と一致せず、順位は保たれないと記していた。 訂正後は登録した規則の下で順位が完全に一致する。 判定を部分的支持としたのは、順位が保たれないためではなく、 順位の一致が集計の規則に依存し、 その規則が登録の時点で基準値の構成と揃えられていなかったためである。

なお表15.18の基準値は、 訂正後の標本の東京都部分で、基準値と同じ構成のとき相関 0.02 以内で一致した。 看護師は小数第三位まで一致する。

E.19 第II部の演繹に対する検定経路

第II部の演繹は、第15段階まで事前登録した予測をほとんど持たなかった。 当時の16の予測のうち同部を明確に対象とするのはDとTの二件で、 Dは方向のみの支持、Tは検証不能である。

第16段階で、第10章の区分「内」について予測Φ1–Φ4 を登録した (第18.1節)。 同区分では手続きの記録そのものが母集団になり、停止したものも残るため、 第12章の生存条件づけが発生しない。 第17章が「母集団フレームを欠く」として断念した項目の 断念理由がここでは消える。

登録にあたり三点を先に区別した(表10.7)。

(1)
手続きが強制する量は検証の対象にならない。 命題10.9の担保制約がこれにあたる。 担保が置かれていることを観測しても、規約を読んでいるにすぎない。 対象になるのは事業者が選んだ結果として現れる量に限られる。
(2)
母集団が異なる(注10.14)。 検証できるのは演繹の正しさであって、 その演繹が現実の一人事業に当てはまるかではない。
(3)
主体単位の量は復元できない(注10.5)。 測れるのは識別子単位の分布にとどまる。

Φ1 については、依存の数と利用量が相関しうるため 対抗仮説を棄却しにくいことを注記した(注18.1)。

E.20 予測YとZの登録

注15.8の観測、すなわち規模と離職率の相関が職種で大きく異なることは、 第14段階まで副次的な観測として記録されたまま用途を持たなかった。

第15段階で、これを表15.13が 「代理変数を構成できていない」と記した努力の情報量、 すなわちB1側の代理として読む経路を示し、予測YとZを登録した (第15.3.5.0節)。

登録にあたり二点を確定した。

第一に、同一標本で検定してはならない(注15.10)。 相関は307社において事後に観測されたものであり、 同じ標本で検定すれば事後的物語化と同型の誤りになる。 要求されるのは標本外での再現である。

第二に、機構は識別されない(注15.9)。 投入の希薄化と選別の緩みは同じ符号を与えるため、 代理変数としては用いうるが機構の主張はできない。

規模と紹介の質の関係には労働経済学に文献があるが本稿は渉猟していない。 付録A.4.1の「接続すべきだが接続していない理論」に追加した。

E.21 棚卸資産の範囲の確認

第16章は DIO を「製品又は商品」のみで計算しており、 仕掛品と原材料を含めていなかった。 限界として「差分と相関を扱う分析には影響が小さいが、水準の絶対値は解釈できない」と 記していたが、根拠を示していなかった。

第14段階で、法人企業統計の「棚卸資産(当期末)」と突き合わせて差を測った (第16.10節)。結果は当該の記述を支持する。 水準は業種により3割以上動くが、ΔCCC の相関は 0.976 である。

副次的に、弾力性 β は 0.900 から 0.960 へ上がり、 決定係数は 0.092 から 0.213 へ改善した。 運転資本は仕掛品と原材料を含めたほうが売上によく比例する。 分母効果の寄与は小さくなる方向であり、第16.9節の結論は強まる。

推定の過程で、定義ごとに W > 0 となる観測が異なるため 標本を揃えないと符号が逆に出ることが判明した(注16.9)。 揃えない場合の値は 0.894 と 0.787 であり、分母効果が増えるという逆の結論になる。

E.22 操作化の補充と未解決一覧の整理

第11章の五段階に照らして各項目を分類したところ、 段階1(操作化)で止まっている項目が未解決の一覧に登録されていないことが判明した。 段階1の不備はデータ取得を要さず定義で埋まるにもかかわらず、 一覧は測定とアクセスの問題に偏っていた。

第13段階で次を行った。

(1)
可用性を式として書いた(定義9.4)。 従来は「拘束を消費する」と述べるにとどまり不等式の形を持たなかった。 容量制約が履行の総量に上限を課すのに対し、 可用性は連続して応答できない区間の長さに上限を課す。次元はともに時間である。
(2)
無人化の程度が定義できない理由を特定した(注9.9)。 従来は「δ の単位が存在しない」と記していたが、 δ は評価写像により貨幣単位を持つ。 正しくは、v が測るのは価値であって手間ではなく、 応答の側で測ろうとすれば Ω ∖Ω^ に測度が定義されない。 障害は単位の不在ではなく測度の不在であり、定義の精密化では解消しない。
(3)
類型への割り当て規則を定めた(第7.9節)。 カタログを実証に用いるには観測された Φ をどの類型に割り当てるかの規則が要るが、 これを持たなかった。族の判定条件は排他的でないため順序を固定した。 順序の選択に演繹的な根拠はなく規約であるから、事前に固定する必要がある (注7.1)。
(4)
第9章に限界節を置いた(第9.4節)。 演繹の章のうち同章のみが限界節を持たず、 その限界は第17章に書かれていた。 理論側の限界を同章へ移し、実証側の限界は第17章に残した。
(5)
未解決の問題を12項目から21項目に整理し直した。 各章の限界節と断念の記録に、一覧に反映されていない項目が9件あった。 うち6件はいずれの障害にも該当せず、着手していないだけであったため、 「障害を持たないもの」として小節を分けた。 優先順位の表も、着手できるものと前進しないものに分けた。

これにより第19章の締めが変わった。 従来は「公表データの取得のみで前進できる項目は残っていない」としていたが、 障害を持たない項目が六件ある。

E.23 実証設計の前置き

第13章は、四分類を調査設計の前段に置くべきであると記録していた。 第III部が標本の選択バイアスを扱う一方で、 「そもそも検証が可能か」を判定する手続きを持っていなかったためである。

第12段階でこれを第11章として実行した。 ただし四分類そのものは前置きしていない。 分類は実証を経て六つに拡張された結果であり、 前置きすればまだ得られていない知見を先に置くことになる。 前に出したのは確認すべき段階のみであり、 通過できなかった原因の分類は第13章に残した(注11.1)。

あわせて、照合と検証の区別を規律として明示した(第11.4節)。 本稿には第8章の族3の照合など、事前登録によらない整合確認が複数あるが、 それらの位置づけを述べた箇所がなかった。 各章が個別に「事後的な照合であり因果を示すものではない」と断るにとどまっていた。 規律が要るのは、照合が母集団の宣言を要さないため 段階2と3を飛ばして成立してしまうからである(注11.2)。

E.24 予測Zを検定した

第22段階まで、予測Zは「標本を取得済みであり、欠けているのは返戻金制度の強度のみ」 として未検定のまま残していた。第23段階で検定し、棄却された。

E.24.1 予測Φ1–Φ4:三つの異なる失敗

第16段階で登録し、第24段階で検定した。四つのうち支持は Φ2 のみである。 失敗の形はいずれも異なる。

Φ1:推定の設計の誤り。 登録の時点では、 観測単位を識別子に保ったまま実装アドレスをクラスタとする頑健標準誤差で扱えば 複製の集中に対処できると考えていた。これは誤りである。 頑健標準誤差はクラスタ内の相関を補正するが、 一つのクラスタが曝露の95%を占める場合の点推定の偏りは補正しない。 支配的なクラスタを外した推定を併記して初めて、 係数の符号が逆転し有意でなくなることが分かった(注18.2)。

Φ3:対照の選び方の誤り。 「CCC の分布は非負に偏る」を 企業部門と対比する設計にしたが、企業部門の CCC も業種の集計では全て非負である。 負の CCC は個別企業に現れ、集計では相殺されて消える。 予測と対抗仮説が同じことを述べており、観測しても区別がつかない。 第15.3.5.0節の予測Bと同型の不良設定である(注18.3)。

Φ4:含意の取り違え。 命題10.6は 受益者の同定を要する Φ が実装できないことを述べる。 そこから「族7 のうち 7-4 のみが残る」を導いたが、 命題が述べるのは実装の可否であって出現の頻度ではない。 族7 が稀であるという量的な部分は当たり、残る型の部分は外れた (注18.4)。

三つに共通するのは、登録の時点で気づけたということである。 いずれも実測の前に検討できた設計上の問題であり、 データが足りなかったのではない。

E.24.2 生産関数の記号を落とした

第26段階まで、技術の側を生産関数 f と呼んでいた。 しかし関数形は一度も与えられておらず、記号一覧にも 「定義域は明示しない」と記していた。本文中の言及は五箇所であり、 いずれも f そのものを使わず、Cprod を通じてのみ現れていた。

第27段階で f を落とし、技術の側を Cprod(履行から費用への対応)に 一本化した。生産余剰の定義(定義6.2)は元から c(δ) = dCprod∕𝑑𝛿 を参照しており、f 抜きで成立する。

名前だけあって実体のない記号を置いていた。

E.24.3 主体の類別と個体の関係を定義した

基本集合は顧客 C、仕入先 S などを「主体の内訳」として挙げるだけで、 個々の顧客と、顧客全体を指す κC の関係を与えていなかった。 κC は本文で頻出し、例2.6では 主体の類別と個体の書き分けが揺れていた。

類別は N の部分集合であること、個々の主体は i ∈ C と N の元として書くこと、 類別を添字にしたときは κC = ∑ ⁡ i∈Cκi と和を表すことを定義に加えた。 添字 j は第10章で識別子に用いるため、主体の個体番号には使わない。

E.24.4 予測Dの判定を改めた

予測Dは第13段階で「依存の少ない構成ほど λ𝑑𝑒𝑝 が小さく、 無人運転可能期間が長い」として登録した。 第16段階で登録した予測Φ1 は「手続きが呼び出す他の手続きの数が少ないほど、 改修されるまでの期間が長い」であり、同一の関係である。 登録の時点で重複に気づいていなかった。

第24段階まで、判定表はDを「部分的支持」としていた。 しかし本文にその判定を支える節がなく、 第17章は「予測Dの検定に至っていない」と記していた。 表と本文が矛盾していた。

第24段階のΦ1 の検定が予測Dの検定でもある。判定を棄却に改めた。

同一の関係を二度登録したこと自体は、事前登録の運用上の失敗である。 登録の一覧を章ごとに持ち、全体で突き合わせていなかったことによる。

強度の測り方は登録時に定めていなかった。読んでから決めれば後付けになるので、 書面を読む前に式(15.2)として固定した。

正規表現による抽出は放棄した。 8件を検めて3件で誤りが出ており、 しかも誤りは強度を過大にする向きに偏っていた。無作為な誤差ではないため 平均を取っても消えない。907件すべてを人が読み、 文字を持たない132件は OCR を通した。判読不能は0件である。

読み取りの過程で、掲示の実務に関する事実がいくつか明らかになった。 料率表だけを画像で貼る書面があり、本文が読めても内容が読めない。 返戻金欄のリンクが手数料表を指す事業所がある。 制度を「有」と表示しながら率を 0% と届け出た事業所がある。 書面を出していることと、その内容が読めることは別である。

E.25 族2と族5を選んだ理由を演繹で与えた

第11.5節は「理論的争点を最も明瞭に含むのは族2 と族5 である」とだけ述べ、 なぜその二つなのかを示していなかった。 枠組みから導ける事柄を導かずに置いていた。

四段で書き直した。式(6.1)の ϕprod は Φ に依存しないので、 Φ の形が効くのは残る二項である。 ϕcog は自由度(5)と(6)を、ϕbarg は自由度(4)を要し、 族の判定順序がこれらをそれぞれ族2と族5に対応させる。 二族は支配的な二軸が張る図2.1の対角に位置する。

あわせて、二族を並べる理由を制度的根拠の違いとして前置きした。 第IV部の結論(網羅性と充実は独立)を先取りせず、 切り分けの必要という設計上の理由に留めた。

E.26 存在しない箇所への参照を消した

第IV部に「第II部末尾で、族5 のほうが条件が良いと見込んだ」 とあったが、第II部にも第11.5節にもその記述はない。 過去の版にあった文が削除された後、それを受ける文だけが残っていた。 結論は保ち、前提の参照だけを落とした。

また、乖離の発生条件は第2段階で命題から注に改めているが、 二箇所が「命題」と参照したままだった。両方を注に直した。

E.27 ϕ𝑐𝑜𝑔 の記述の矛盾を解いた

第14.6.1節の直前で「対応する測定値は族2の回収額のみ」と述べ、 節の中で「先行研究には直接の測定例がある」と続けていた。 同じ量について、測定例が無いとも有るとも書いていた。

正しくは、測定可能であり測定例もある。本稿が自ら得たものが上界にとどまる。 族2の回収額を測定例の一つに繰り入れ、四例を並べる形に改めた。

E.28 棚卸資産の範囲を62業種に広げた

第14段階では10業種・11規模階層でのみ測り、 「弾力性は定義の是正で改善する」と書いた。 62業種・全規模に広げると向きが逆になり、 分母効果は 0.160 から 0.172 へわずかに増える。

両者は誤差ではない。規模階層のあいだの変動と、 業種のあいだの変動とでは、識別している対象が違う。 本章の推定は業種と年度の変動で識別されるので、 当てはまるのは62業種のほうである(注16.8)。

標本の覆う範囲を、結論の及ぶ範囲と取り違えていた。 10業種で得た向きを45業種の推定に当てはめられる保証はどこにもなかった。 判定は三つとも「支持」のまま残るが、いずれも第14段階より弱い。

E.29 個社データの取り扱いを明示した

人材サービス総合サイトは、集計値ではなく事業所ごとの届出内容を掲載している。 第19段階でこれをリポジトリに同梱したが、 解析の入力として用いることと、収集した集合を再配布することは別である。

付録E.33に方針を書き、個社データをリポジトリから外した。 残したのは許可・届出受理番号の一覧のみで、届出の値は含まない。 これを種として取得し直せば、手数料実績率・離職率・就職者数は再現できる。 既に公開していた分は履歴から除去した。

E.30 記号の多重定義

第28段階で全文を走査し、同じ文字を別の意味に使っていた箇所を六件直した。

文字 残した意味

改めた側

c 限界費用 c(δ)

定額料金 → F、生活費 → c𝑙𝑖𝑣

m 粗利率・営業利益率

会員数 → n

r 売上速度

リスク回避度 → γ

τ 決済の遅れ τi

倒産時刻 → Tins

A 固定資産

応答の集合 →𝒜、主体 → i,j

a 応答、年齢(APC)

受託配分 →Capcl

表 E.10: 第28段階で解消した記号の多重定義。

c は四つの意味を持っていた。Age–Period–Cohort のコホート c だけは 文献の記法に従うため残し、その旨を本文で断った。

あわせて自由度(2) の三形式を式(2.10) π = F + 𝑝𝛿 にまとめた。 p = 0 が定額、F = 0 が従量、いずれも非零が二部料金である。 形式が三つ並んでいたものが一つの族になった。

E.31 件数の訂正

第II部のカタログを第1段階から一貫して「27類型」と記していたが、 族ごとの件数は 4、5、3、3、5、4、4 であり合計は28である。 第9段階で本文11箇所を訂正した。族の構成と各類型の内容に変更はない。

E.31.1 類型を「基底」と呼んでいた

第27段階まで、第7章のカタログについて 「単一の類型に還元できないことは、類型が基底として機能していることを意味する」 と記していた。しかし Φ の空間に加法が定義されていなかったため、 この語は意味を持たなかった。

第28段階で命題3.9として κ の加法性を定め、 同時に分解が一意でないこと(注3.10)を示した。 一意性がない以上、類型は生成系であって基底ではない。本文の語を改めた。

E.32 検討したが本文に採らなかったもの

第9段階で第10章を書くにあたり、 当初はこれを新規の寄与として提示する構成を検討した。 文献を確認した結果、担保制約による調達の制限、 資産を持たない主体の排除、識別子と主体の乖離のいずれにも 既存の対応があることが判明したため、 新規性を主張しない形に改め、付録A.4.1に対応表を追加した (注10.13)。

本章を残したのは、第I部の理論が 具体的な条件の下でどう機能するかを示す位置に、 第4章の 𝒢 を動かす例が欠けていたためである。 第8章および第9章と同じ役割による。

E.32.1 内点解でない配分を内点解と述べていた

第27段階まで、第8章の式(8.14)について 「内点解が存在し」と記していた。式は配分 Cap cl について線形であり、 0 < 𝜃 < γ の下では狭義単調減少であるから、 それ単独では端点 Capcl = 0 が最大となる。受託が現金をもたらすことを 目的にも制約にも入れていなかったための誤りである。

第28段階で、基本不等式が要求する現金を制約として明示し、 最適配分を制約の縁 Cap cl∗ = c𝑙𝑖𝑣∕w として導き直した(命題8.10)。 結論の向き——案件選択の基準が報酬額から 𝜃 に移ること——は変わらない。

E.33 構成の変更

内容の訂正とは別に、構成を二度変更した。

(1)
検討の時系列順から、理論・類型・方法・実証・総括の論理順へ。
(2)
制約下の演繹(第8章、第9章)を 独立した「応用」部から第II部へ移動。 応用が正当化されるのは理論が実証を経た後であり、本稿の実証は完結していないため。

第二の変更に伴い、64件の参照不整合(部と章の取り違え)と 2件の論理逆転(後続の章を過去形で参照)を修正した。