Chapter 18
手続き上の記録による実証:
と改修の率
第10章の区分「内」では、、、、 が 識別子ごとに公開されている(第10.6節)。 他の章では個社データを要するため測れない量である。本章はこれを観測する。
母集団は基準時点で稼働していた の全数であり、標本は事後に選んでいない。
18.1 検証する含意
第11.5節の手続きに従い、取得の前に四つの含意を固定した。 区別のため に番号を付す。
含意1:手続きが呼び出す他の手続きの数が少ないほど、 改修されるまでの期間が長い。命題9.2の 側の含意である。
対抗仮説:改修の頻度は依存の数ではなく利用量で決まる。 依存が少なくとも利用が多ければ改修される。
含意2:取引が途絶えた について、 は途絶に先行して単調に減少する。 第4.2節の が吸収状態であることの含意である。
対抗仮説:途絶は と無関係に生じる。 は途絶の直前まで変化しない。
含意3:区分「内」で稼働する の の分布は非負に偏る。 系10.12より、 の実現には を要するためである。
対抗仮説: の分布は第16章の企業部門と同様であり、 区分「内」に固有の偏りはない。
含意4:稼働する を第7.9節の規則で割り当てると、 族7は 7-4 を除いてほぼ現れない。命題10.6の含意である。
対抗仮説:族7型も他の族と同程度の比重で現れる。
18.1.1 事前に確定した事項
| 項目 | 内容 |
| 母集団 | 基準時点に手続きの記録上で稼働していた の全数。事後に選ばない |
| 下限 | 取引件数が基準期間に一定数未満のものを除く。閾値は取得前に確定する |
| 途絶の定義 | 一定期間にわたり取引が生じないこと。区分「内」では手続き自体は停止しないため、停止ではなく途絶で定義する |
| 定常状態 | は定常を前提とするため、 が安定した期間に限る(第12.4節) |
| 観測単位 | 識別子。主体単位への集計は行わない(注10.5) |
| 類型の割り当て | 第7.9節の判定順序を用いる。順序は変更しない |
注 18.1 ( と利用量は相関しうる). 含意1 の対抗仮説は棄却しにくい。 依存の多い手続きは機能が豊富であり、利用量も大きい傾向があるためである。 検定では利用量を統制する必要があるが、 統制後も残差に依存の効果が現れるかは事前には分からない。 統制の手続きを取得前に確定しておく。
18.2 検定の結果
支持されたのは一つである。
| 含意 | 標本 | 結果 |
判定 |
| 1 | 改修可能な手続き 193 万件 | 依存の数は改修までの期間を説明しない |
棄却 |
| 2 | 手数料と残高の双方を持つ 427 件 | 途絶前 30 日で減少() |
支持 |
| 3 | 稼働する 52 件 | 対抗仮説が識別されない |
検証不能 |
| 4 | 同上 | 族7 は 1 件だが 7-2 であり 7-4 は現れない |
棄却 |
注 18.2 (複製の集中が推定を支配する). 193 万の識別子が指す実装は 76,609 種しかない。 うち一つを 155 万件、すなわち母集団の 80% が指している。 これらは独立な ではなく、一つの の複製である。
全体では依存の数の係数が正で有意になるが()、 この一つのクラスタを外すと符号が逆転して有意でなくなる()。 クラスタ頑健標準誤差では防げない。 クラスタ内の相関は補正するが、一つのクラスタが曝露の 95% を占める場合の 点推定の偏りは補正しないためである。
注10.5の加法性の喪失は主体と識別子の乖離を述べたが、 同一の実装を指す識別子の集中は別の形の乖離である。 台帳上で標本を組むときは、複製の集中を先に数える必要がある。
注 18.3 (対照が識別されない). は前受けであり、系10.12によれば を要する。 しかし比較対象である企業部門の は、 第16章の 58 業種すべてで非負である(最小 4.9 日)。 負の は個別企業に現れるもので、業種の集計では相殺されて消える。
含意と対抗仮説が同じことを述べており、観測しても区別がつかない。 第15.3.5.0節の可測性仮説と同型の不良設定である。 加えて区分「内」の は秒の単位であり、企業部門の日の単位とは桁が五つ違う。
注 18.4 (実装できることと現れることは別である). 族7 は 52 件中 1 件であり、稀であるという量的な部分は当たった。 しかし現れたのは 7-2(クロスサブシディ)であり、7-4 は 0 件であった。
この含意は命題10.6から「7-4 のみが残る」を導いていたが、 命題が述べるのは実装の可否であって出現の頻度ではない。 実装できることから現れることを導いたのが誤りである。
なお唯一の 7-2 は、受益者の選定を署名により手続きの外で行っている。 命題10.6と整合するが、 含意の文言が外れている以上これを支持の証拠として扱わない。
注 18.5 (判定順序の前に一段が要る). 表7.8は を所与としている。 台帳の識別子に当てると、標本 200 件のうち 131 件が ではなかった。 トークンの台帳(決済の媒体であり と の対を持たない)が 74 件、 対価を伴わない基盤が 27 件、 そして決済媒体の名を模した識別子が 30 件である。
18.3 同じ記録から測れる量
含意の検定に用いた記録から、他の章で測れなかった量が三つ測れる。
18.3.1 未想定状態への応答の率
命題9.2は無人で運転できる期間を とした。 区分「内」では二つの率が測れる。
| 量 | 内容 |
(毎年) | |
| 改修の率 | 実装が差し替えられた率。193 万件、うち複製の集中を除く |
0.048 | 20.6 年 |
| 停止の率 | 稼働が絶えた率。1,718 件の全数 |
0.030 | 33.8 年 |
注 18.6 (測っているのは ではない). 表18.3の二つは、いずれも未想定状態の到来ではなく 到来に対する応答を数えている。改修は運営者が応答した場合であり、 停止は応答しなかったか、応答できなかった場合である。
到来しても応答を要さなかった場合は、どちらにも現れない。したがって
であり、測れたのは下限である。母集団が異なるため二つは加法的でないが、 命題9.2の は 20 年より短いという上限が得られる。
改修までの期間の分布は極端に偏る。改修された 20,732 件の中央値は 42 日であるのに対し、 改修されないまま観測を終えた 190 万件の中央値は 4.6 年である。 手を入れるものは直ちに入れ、入れないものは何年も入れない。 平均としての はこの二峰性を覆い隠す。
18.3.2 手続きの継続期間
第17章は無人継続期間の直接測定を「母集団フレームを欠く」として断念した。 第10.6.1節のとおり、区分「内」ではこの断念の理由が消える。
稼働した 1,718 件の全数について、停止したものが 143 件(8.3%)、 継続中が 1,575 件である。停止したものの継続期間は中央値 1.62 年、 四分位は 0.64–2.82 年、最大 6.0 年であった。継続中のものは中央値 2.75 年である。 停止したものを事後に集めたのではなく全数から数えているため、 第12.2節の生存条件づけは生じない。
種別ごとの停止率には順序がある。役務 年、 高倍率の運用 11.5 年、発行支援 15.3 年、指数 18.1 年、橋渡し 20.1 年、 保険 22.3 年、貸付 22.6 年、利回り 22.7 年である。 他の手続きへの依存が薄い種別ほど長いという向きは読めるが、 含意1 が棄却された以上、この順序を依存の数で説明することはしない。
18.3.3 拘束された状態
表10.1は について「対応する量を本稿は持たない」と記していた。 区分「内」では手続き上に置かれた資産として直接観測でき、 1,718 件の日次系列が得られる。含意2 で の代理としたのはこれである。
18.3.4 料率
が測れると、年間の手数料を で割った料率が定義できる。 ただし分母は族によって異なる。族3(資産の時間貸し)では が正しい分母だが、 族6(媒介)では取引額が分母であり は在庫にすぎない。 混ぜると比が発散する。
族3系に限り、 が 100 万ドル以上のもの 144 件で測った料率は次のとおりである。
種別 |
中央値 | 四分位 | |
裁定 |
7 | 4.97% | 2.00–9.31% |
実物資産 |
20 | 3.85% | 2.35–5.84% |
担保付債務 |
15 | 3.53% | 0.99–11.86% |
流動化した預託 |
19 | 3.12% | 2.58–4.21% |
貸付 |
30 | 2.97% | 1.77–4.68% |
危険の管理 |
21 | 2.83% | 2.02–4.47% |
利回り |
15 | 2.72% | 0.76–8.01% |
利回りの集約 |
14 | 1.69% | 0.90–4.19% |
全体の中央値は 3.07%、四分位は 1.77–5.84% である。 第17章の料率の梯子と同型の並びだが、 比較はできない。第17章の料率は取引額に対する率であり、 ここでの料率は残高に対する率である。次元が違う。