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v0.28.9 — 本稿は建設中です。理論の構成、命題、実証の結論はいずれも変更されうるものです。概要

Chapter 18
手続き上の記録による実証:M(t) と改修の率

第10章の区分「内」では、M(t)、κj、δ¯ − δ、B が 識別子ごとに公開されている(第10.6節)。 他の章では個社データを要するため測れない量である。本章はこれを観測する。

母集団は基準時点で稼働していた Φ の全数であり、標本は事後に選んでいない。

18.1 検証する含意

第11.5節の手続きに従い、取得の前に四つの含意を固定した。 区別のため Φ に番号を付す。

含意Φ1:手続きが呼び出す他の手続きの数が少ないほど、 改修されるまでの期間が長い。命題9.2の λ𝑑𝑒𝑝 側の含意である。

対抗仮説:改修の頻度は依存の数ではなく利用量で決まる。 依存が少なくとも利用が多ければ改修される。

含意Φ2:取引が途絶えた Φ について、 M(t) は途絶に先行して単調に減少する。 第4.2節の τ = inf ⁡ {t : M(t) < 0} が吸収状態であることの含意である。

対抗仮説:途絶は M(t) と無関係に生じる。 M(t) は途絶の直前まで変化しない。

含意Φ3:区分「内」で稼働する Φ の CCC の分布は非負に偏る。 系10.12より、CCC < 0 の実現には E > 0 を要するためである。

対抗仮説:CCC の分布は第16章の企業部門と同様であり、 区分「内」に固有の偏りはない。

含意Φ4:稼働する Φ を第7.9節の規則で割り当てると、 族7は 7-4 を除いてほぼ現れない。命題10.6の含意である。

対抗仮説:族7型も他の族と同程度の比重で現れる。

18.1.1 事前に確定した事項

項目

内容

母集団

基準時点に手続きの記録上で稼働していた Φ の全数。事後に選ばない

下限

取引件数が基準期間に一定数未満のものを除く。閾値は取得前に確定する

途絶の定義

一定期間にわたり取引が生じないこと。区分「内」では手続き自体は停止しないため、停止ではなく途絶で定義する

定常状態

CCC は定常を前提とするため、r が安定した期間に限る(第12.4節)

観測単位

識別子。主体単位への集計は行わない(注10.5)

類型の割り当て

第7.9節の判定順序を用いる。順序は変更しない

表 18.1: 四つの含意について事前に確定した事項。

注 18.1 (λ𝑑𝑒𝑝 と利用量は相関しうる). 含意Φ1 の対抗仮説は棄却しにくい。 依存の多い手続きは機能が豊富であり、利用量も大きい傾向があるためである。 検定では利用量を統制する必要があるが、 統制後も残差に依存の効果が現れるかは事前には分からない。 統制の手続きを取得前に確定しておく。

18.2 検定の結果

支持されたのは一つである。

含意 標本

結果

判定
Φ1 改修可能な手続き 193 万件

依存の数は改修までの期間を説明しない

棄却
Φ2 手数料と残高の双方を持つ 427 件

途絶前 30 日で減少(p = 3.2×10−9)

支持
Φ3 稼働する Φ 52 件

対抗仮説が識別されない

検証不能
Φ4 同上

族7 は 1 件だが 7-2 であり 7-4 は現れない

棄却
表 18.2: 四つの含意の検定結果。

注 18.2 (複製の集中が推定を支配する). 193 万の識別子が指す実装は 76,609 種しかない。 うち一つを 155 万件、すなわち母集団の 80% が指している。 これらは独立な Φ ではなく、一つの Φ の複製である。

全体では依存の数の係数が正で有意になるが(p = 0.004)、 この一つのクラスタを外すと符号が逆転して有意でなくなる(p = 0.45)。 クラスタ頑健標準誤差では防げない。 クラスタ内の相関は補正するが、一つのクラスタが曝露の 95% を占める場合の 点推定の偏りは補正しないためである。

注10.5の加法性の喪失は主体と識別子の乖離を述べたが、 同一の実装を指す識別子の集中は別の形の乖離である。 台帳上で標本を組むときは、複製の集中を先に数える必要がある。

注 18.3 (対照が識別されない). CCC < 0 は前受けであり、系10.12によれば E > 0 を要する。 しかし比較対象である企業部門の CCC は、 第16章の 58 業種すべてで非負である(最小 4.9 日)。 負の CCC は個別企業に現れるもので、業種の集計では相殺されて消える。

含意と対抗仮説が同じことを述べており、観測しても区別がつかない。 第15.3.5.0節の可測性仮説と同型の不良設定である。 加えて区分「内」の τ は秒の単位であり、企業部門の日の単位とは桁が五つ違う。

注 18.4 (実装できることと現れることは別である). 族7 は 52 件中 1 件であり、稀であるという量的な部分は当たった。 しかし現れたのは 7-2(クロスサブシディ)であり、7-4 は 0 件であった。

この含意は命題10.6から「7-4 のみが残る」を導いていたが、 命題が述べるのは実装の可否であって出現の頻度ではない。 実装できることから現れることを導いたのが誤りである。

なお唯一の 7-2 は、受益者の選定を署名により手続きの外で行っている。 命題10.6と整合するが、 含意の文言が外れている以上これを支持の証拠として扱わない。

注 18.5 (判定順序の前に一段が要る). 表7.8は Φ を所与としている。 台帳の識別子に当てると、標本 200 件のうち 131 件が Φ ではなかった。 トークンの台帳(決済の媒体であり δ と π の対を持たない)が 74 件、 対価を伴わない基盤が 27 件、 そして決済媒体の名を模した識別子が 30 件である。

最後のものは定義10.1を満たすが履行を持たない。 第10.3節の ι の観測不能が、 名称の詐称という形で現れている。

18.3 同じ記録から測れる量

含意の検定に用いた記録から、他の章で測れなかった量が三つ測れる。

18.3.1 未想定状態への応答の率

命題9.2は無人で運転できる期間を 1∕λ𝑛𝑜𝑣𝑒𝑙 とした。 区分「内」では二つの率が測れる。

量

内容

λ(毎年) 1∕λ
改修の率 λ𝑓𝑖𝑥

実装が差し替えられた率。193 万件、うち複製の集中を除く

0.048 20.6 年
停止の率 λ𝑠𝑡𝑜𝑝

稼働が絶えた率。1,718 件の全数

0.030 33.8 年
表 18.3: 区分「内」で測った応答の率。

注 18.6 (測っているのは λ𝑛𝑜𝑣𝑒𝑙 ではない). 表18.3の二つは、いずれも未想定状態の到来ではなく 到来に対する応答を数えている。改修は運営者が応答した場合であり、 停止は応答しなかったか、応答できなかった場合である。

到来しても応答を要さなかった場合は、どちらにも現れない。したがって

λ𝑛𝑜𝑣𝑒𝑙 ≥λ𝑓𝑖𝑥 + λ𝑠𝑡𝑜𝑝

であり、測れたのは下限である。母集団が異なるため二つは加法的でないが、 命題9.2の 1∕λ𝑛𝑜𝑣𝑒𝑙 は 20 年より短いという上限が得られる。

改修までの期間の分布は極端に偏る。改修された 20,732 件の中央値は 42 日であるのに対し、 改修されないまま観測を終えた 190 万件の中央値は 4.6 年である。 手を入れるものは直ちに入れ、入れないものは何年も入れない。 平均としての 1∕λ はこの二峰性を覆い隠す。

18.3.2 手続きの継続期間

第17章は無人継続期間の直接測定を「母集団フレームを欠く」として断念した。 第10.6.1節のとおり、区分「内」ではこの断念の理由が消える。

稼働した 1,718 件の全数について、停止したものが 143 件(8.3%)、 継続中が 1,575 件である。停止したものの継続期間は中央値 1.62 年、 四分位は 0.64–2.82 年、最大 6.0 年であった。継続中のものは中央値 2.75 年である。 停止したものを事後に集めたのではなく全数から数えているため、 第12.2節の生存条件づけは生じない。

種別ごとの停止率には順序がある。役務 1∕λ = 11.1 年、 高倍率の運用 11.5 年、発行支援 15.3 年、指数 18.1 年、橋渡し 20.1 年、 保険 22.3 年、貸付 22.6 年、利回り 22.7 年である。 他の手続きへの依存が薄い種別ほど長いという向きは読めるが、 含意Φ1 が棄却された以上、この順序を依存の数で説明することはしない。

18.3.3 拘束された状態 B

表10.1は B について「対応する量を本稿は持たない」と記していた。 区分「内」では手続き上に置かれた資産として直接観測でき、 1,718 件の日次系列が得られる。含意Φ2 で M(t) の代理としたのはこれである。

18.3.4 料率

B が測れると、年間の手数料を B で割った料率が定義できる。 ただし分母は族によって異なる。族3(資産の時間貸し)では B が正しい分母だが、 族6(媒介)では取引額が分母であり B は在庫にすぎない。 混ぜると比が発散する。

族3系に限り、B が 100 万ドル以上のもの 144 件で測った料率は次のとおりである。

種別

n 中央値 四分位

裁定

7 4.97% 2.00–9.31%

実物資産

20 3.85% 2.35–5.84%

担保付債務

15 3.53% 0.99–11.86%

流動化した預託

19 3.12% 2.58–4.21%

貸付

30 2.97% 1.77–4.68%

危険の管理

21 2.83% 2.02–4.47%

利回り

15 2.72% 0.76–8.01%

利回りの集約

14 1.69% 0.90–4.19%
表 18.4: 族3系の料率(年間手数料 ÷ 拘束された状態)。

全体の中央値は 3.07%、四分位は 1.77–5.84% である。 第17章の料率の梯子と同型の並びだが、 比較はできない。第17章の料率は取引額に対する率であり、 ここでの料率は残高に対する率である。次元が違う。